〜あらすじ〜
旅に出よう、君を助手席に乗せて。この滅びかけた異世界で。
滅びかけた異世界に迷い込んだケースケは、ハーフエルフの少女・ニトと出会う。彼女の母親が遺した手帳に描かれた“黄金の海原”を探し、二人は辛うじて生き残った人々たちとの出会いと別れを重ねてゆくのだが――。
こんにちは。
今回はこの本の感想を書いて行こうかと。
タイトルは記事の名前にある通りのものです。
実はファンタジア文庫の作品を読むのがこれが初めてになります。
惹かれたのはタイトルとにもし先生の綺麗な表紙イラストです。
料理をする青年と武器...じゃなくてイーゼルを持つ少女の描き方が素晴らしくこれだけでも買う理由には十分でした。
異世界の話なので読むまでイーゼルは杖か何かだと思ってました。なんか見た目強そうですし
テーマはボーイミーツガールとその2人の出会いと別れを繰り返す旅ものですが、いつ2人の旅が終わりを迎えるのかわからないハラハラ感が常に並行して存在しています。
というのもこの世界は、魔力が溢れてしまう魔力崩壊が起き、人は遅かれ早かれその影響で結晶となってしまうのです。
何故結晶なのかはまだ詳しく説明がないのでわかりませんがRPGには魔力結晶のようなアイテムもありますし魔力の塊になってしまうという事でしょう
そうなってしまったのが異世界召喚者のせいと言うのがなんとも数多に存在する異世界転生や召喚系に対する皮肉が効いてて面白かったですね。
どの作品もやり方を間違えてしまえば簡単にこの作品のような世界になってしまうのではないか等の考察が捗りました。
大体の作品で異世界召喚者はその世界のバランスを狂わせるので可能性は常に並行して存在しているのかもしれません。
話が逸れたので戻します。
表紙の右側の少女であるニトは生まれつき魔力欠乏症候群という病気で、常に周りにたくさんの魔力がないと生きることすらままならない状態でしたが、魔力が過剰に溢れている世界になった事で自由に外を歩き、旅ができるようになるというのもなんとも切なく皮肉な話だなと。
彼女はそれまでは自室に篭り本を読んで日々を過ごすしかなく、それでも家族と過ごす時間は幸せだったとは思いますが閉鎖感は否めなかったと思います。
いくら物語の世界に浸っていても、ふとした時にその現実に目を向けてしまうものです。
外の世界の話は亡くなった母がたくさんしてくれていた事もあり外の世界を旅したいという想いは膨れ上がって行った事でしょう。
ですが彼女はこのまま生きていた場合それが叶うことは奇跡が起きない限りあり得ない事です。
実際にその奇跡は起きましたが
自由になったとしてもいつ結晶になり死ぬのかわからない状態が常に付き纏っています。
こんなめちゃくちゃ重い設定に誰がしろと言ったー!こちとら読んでて切なさで押しつぶされそうなんですよ!!
でもこういう設定大好きだし出会えて良かったと思う!ありがとう風見鶏先生!
右側で料理を作っているケースケは、キャンプに向かう途中に異世界に召喚されてしまいます。
ですが来た世界は既に滅びかけ
かつてここまで絶望感のある異世界召喚があっただろうか...?
来たくて来たわけじゃないのに元いた世界よりもずっと生きるのが難しい世界に来てしまったのは本当に可愛そうだなと思います。
実際に何度か自殺をしようとするシーンがあるくらいには追い詰められています。
ニトとの出会い生きる理由を経たのは本当に幸運だったと思います。
作中にてニトは素直に思った事が表情に出る子で怒りや笑顔など色んな表情で読者を和ませてくれて楽しく読めました。
特にニトの食事のシーンは読んでいるこっちも笑顔になってしまう、素敵な反応でした。
ここからは少し疑問に思った点なのですが
彼女は何歳なのでしょうか?
作中ではケースケの視点で幼いや年齢にそぐわないと言われていましたが、正確な年齢は彼女の口から言うシーンはありません。
ハーフエルフというケースケとは違う種族である以上年齢は人間の倍以上を生きられるものと推測されるけど
ケースケは自己紹介にある通り高校生だから15〜18、見た目こそ幼いもののニトは本当はずっと年上なのではないか
その辺の話もこの先切り込んでくれるかどうか、期待しています。
※もし僕の見落としでどこかでニトまたはケースケの口から正確な年齢を話す箇所があった場合コメント等で教えていただけると助かります。
3/9 追記
28ページにてケースケはハーフエルフをよく知らないと言っていたのでそもそもフィクションのエルフ自体を知らない可能性があったから見た目で年齢を判断したのかもしれません。
常に滅びと隣り合わせの中で健気に生きていく男女の姿はとても尊いものだと思います。
少しでも長く、ニトとケースケの旅が続きますように。
あわよくば黄金の海原を2人で見る事ができるまでは旅ができますように、心から願っています。
余談ですが最近やけに終末ものや旅ものを読む気がします。
無意識に求めているのだと思いますが偶然にもその2つが合わさったこの作品に出会えたのはまさに運命の出会いと言っても過言ではないかもしれません。