夕暮れのみかん箱の上で

作品の感想や考察を気ままにあげるところ

彼女は僕の「顔」を知らない。感想

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読書メーターに感想書いてたら収まらなかったのでこちらに。

ミステリーっぽいあらすじと表紙が好みだったので購入。
主人公の良が多くは語らず展開されていく話と、タイトルにもある人の表情が読み取れない失望症のヒロインである静葉とのやりとりはどこかすれ違っていて、でもどこか暖かいものを感じていました。
特に静葉の敬語混じりなタメ口はすごく読んでいて心地の良いものがありました。主人公を良くんと呼ぶのもまた良いなって思いました。

それはもう1人のキャラクターである奈々も同じなのですがあちらは10年来の付き合いもあるのでまた違うものがありますね。

 

この手の作品には珍しくしっかりとこいつが犯人だ!というのが証明されぬまま終わったのは少し驚きました。

匂わせてはいるけどまだこれからという感じで。

 

10年の月日が流れているので少しずつ普通の人と離れたものを持つ3人がそれぞれ事件に対してどう向き合い成長したかを見るのも楽しくて。

奈々みたいな嫉妬で狂って間違えてしまう子を見るのは好きです。そこに生を感じるので。

それに対して真っ直ぐ向き合う静葉もまた美しい。

自己満足のために目に入る全てをできる限り救おうとする良もまた美しいです。

適切な表現なのかわかりませんが美しいなと思う事が多かった気がします。

ラストの告白は、個人的にはすごく2828するものがありました。

これは兄妹の恋愛ストーリーだったのかもしれない。兄妹では無いけど。

これからもお互いに支え合って幸せで生きて欲しいなと感じる終わりでした。

もちろん奈々もいつか救われる未来が来ればいいなと思います。

良い一冊でした。